〜トヨタ クラウンにも似た到達点と限界〜
8.25インチ/1.9mm線径のポケットコイルを内蔵する、
ビューティレストプレミアムシリーズの最上位モデル、カスタムロイヤル。
直近のモデルチェンジにより、中央部にウレタンを追加した
簡易的なゾーニング仕様となったが、
基本構成はこれまでと大きく変わっていない。
相変わらず、上質な寝心地である。
筆者は正直なところ、
近年の**シモンズ**の方向性には
あまり共感できない部分も多い。
だが、このカスタムロイヤルだけは、
今なお「好きなマットレス」の一枚であり続けている。
理由は明確だ。
スプリングマットレスにおいて、
基本性能の根幹はコイル高にある。
ここを蔑ろにしたまま、
クッション材を重ね、
装飾を増やし、
価格だけを引き上げても、
どこか空虚さが残る。
その点、カスタムロイヤルは正攻法だ。
国内トップクラスのコイル高を土台に据え、
その上にピロートップを載せる。
極めて素直で、誠実な構成である。
座った瞬間は、
ストロークの長さゆえにズボッと沈む。
だが横たわると、
身体の凹凸に沿うように優しくフィットし、
最初の振動はピタリと収まる。
反発は穏やかで、
それでいて底付き感はない。
ほんの少し寝ただけで、
「ああ、これはちゃんとしている」
と分かってしまうタイプのマットレスだ。
ここまで読むと、
まるで手放しで褒めているように見えるかもしれない。
だが、このマットレスには
もう一つの顔がある。
それは、
トヨタのクラウンに非常によく似ている、
という点だ。
基礎性能は高く、
奇をてらわず、
長年積み上げてきた「正しさ」がある。
派手さはないが、
使い込むほど評価が上がる。
分かる人には、一瞬で伝わる。
まさに
「まだクラウンがクラウンだった頃」
の王道的な完成形である。
だが同時に、
それはクラウンで止まってしまった
という意味でもある。
トヨタはその後、
クラウンとは別にレクサスを立ち上げ、
「高級とは何か」を
もう一段抽象化し、
世界に問い直した。
一方でシモンズはどうだろうか。
リュクスという新シリーズは生まれたが、
そこにあるのは
思想の更新というより、
装備と価格の上積みに近い。
ダブルクッション、
分厚いピロートップ、
より高額なプライスタグ。
確かに“高そう”ではある。
だが、それは
クラウンを豪華にしただけであって、
別の価値軸を作ったわけではない。
その意味で言えば、
カスタムロイヤルは今なお
シモンズの中で
最も正直で、最も完成度が高い一枚であると同時に、
そこから先へ踏み出せていない証拠
でもある。
完成してしまったがゆえに、
更新できない。
だから皮肉なことに、
シモンズの中で
いちばん出来が良いマットレスが、
いちばん未来を感じさせない
という逆説が成り立ってしまう。
良い。
だが、そこで終わっている。
カスタムロイヤルは、
確かに名作である。
だが同時に、
名作であること自体が限界になってしまった
マットレスでもある。
その事実こそが、
この一枚の最大の評価であり、
最大の弱点なのだ。