ポケットコイルを採用するブランドとして並び称されることの多いシモンズとサータ。
では、この2つのブランドにはどのような違いがあるのだろうか。
まず大きな違いとして挙げられるのが、コイルユニットにおけるゾーニングの考え方である。
シモンズは基本的にコイルによるゾーニングを行わない。
一方でサータは、ゾーニングを採用しているモデルが多い。
ゾーニングとは、身体の部位ごとの重さや形状に合わせてコイルの硬さを変える設計のことを指す。
一般的に、人間の体重は約44%が臀部、つまりお尻の部分に集中すると言われている。
この部分をしっかり支えるためには、ある程度しっかりとした反発力が必要になる。
しかし同じ硬さでは、横向きになった際に肩が十分に沈み込まず、圧迫感につながる可能性がある。
肩は骨格的に突出しており、仰向けよりも横向き時の沈み込み量が大きくなる部位だからである。
そこでサータは、臀部周辺はしっかり支えつつ、肩や脚部には相対的に柔らかいゾーンを配置することで、体圧分散と寝姿勢の安定を両立させようとしている。
さらに現在では腰部と臀部を分けて考える設計も見られるようになってきた。
お尻は柔らかく受け止めながら、腰をしっかり支える「センターソフトゾーニング」と呼ばれる考え方である。
腰部は体重の集中点であると同時に、寝姿勢の安定に最も影響する部位でもある。
そのため臀部とは異なる支持特性を与えることで、より自然な姿勢を維持しやすくすることが目的となっている。
部位ごとに役割を分けることで、より理想的な荷重バランスに近づける。
これがサータの基本的な設計思想である。
一方シモンズは、ゾーニングという手法を採らず、コイル全体の完成度を高めることで幅広い体型に対応しようとしている。
その代表的なアプローチがコイルの高さである。
5.5インチ → 6.5インチ → 7.5インチ → 8.25インチとコイルを高くすることで、ストローク量を確保し、異なる荷重条件への対応力を高めている。
コイルが高くなるほど沈み込みの許容量が増え、重たい臀部をしっかり支えるだけの反発力を持ちながら、突出している肩の部分には必要なだけの沈み込みを許容することができる。
つまりゾーニングのように部位ごとに硬さを変えるのではなく、コイル全体の動作範囲そのものを広げることで、体格差への適応性を確保しようとしているのである。
どちらが優れているか、という話ではない。
ゾーニングによって部位ごとの役割を明確にするサータと、コイル単体の完成度とストロークで対応するシモンズ。
アプローチが異なるだけで、どちらも理にかなった設計思想である。
では、クッション層についてはどうだろうか。
かつてのシモンズは「クッション層が薄いからこそコイルの良さが際立つ」という趣旨の説明をカタログで展開していた記憶がある。
ポケットコイルそのものの性能を重視する思想が強く表れていた部分と言えるだろう。
しかし現在のラインナップを見ると、その傾向はやや変化している。
例えば現行の21年型ゴールデンバリューは厚さ28cm、ひとつ前の16年型は29.5cmとなっている。
かつて主流だった25cm前後のモデルと比較すると、片面あたり1〜2層程度クッション材が増えている計算になる。
さらに上位モデルになるとピロートップ仕様が多くなり、クッション層の存在感はより大きくなる。
現在のシモンズは、コイルの性能を核としつつも、表層の快適性を重視する方向にもシフトしているように見える。
一方のサータは、自ら「ミルフィーユ構造」と表現しているように、多層のクッション材を組み合わせる設計が特徴的である。
ジェルメモリーフォームや高弾性フォームなど異なる特性の素材を積層し、それぞれの役割を分担させることで寝心地を構成していく。
この考え方には、耐久性に対する配慮という側面もある。
マットレスのクッション層は、使用とともに徐々に性能が変化していく。
複数の層を組み合わせることで、一部の層に変化が生じた場合でも全体のバランスが崩れにくくなる。
結果として、寝心地の変化を緩やかにするという考え方である。
ポケットコイル単体の完成度を重視するシモンズに対し、
複数素材の組み合わせによって寝心地を設計していくサータ。
クッション層の構成にも、それぞれの思想の違いが表れていると言えるだろう。
つまり両者の違いは「コイルの違い」というよりも、「寝心地の作り方の違い」と言った方が実態に近い。
ただし、注目すべきは、この『違い』そのものが
変化しつつあるという点だ。
シモンズが以前に比べて厚めのクッション層を採用するようになったことは、
実は『コイル単体の完成度』だけでは市場の要求に応えられなくなったことを示唆しているのではないか。
つまり、業界全体が『複合的な設計』へシフトしており、
『コイル一本槍』というシモンズの従来の思想は、
実質的には後退しつつあるということだ。
これは市場圧力による『設計思想の転換』であり、
同時に『消費者ニーズの変化』をも示唆している」