スランバーランド SL-HL-03

――隠しきれない思想の矛盾

既にお気づきの方もいるだろうが、筆者はフランンスベッドのマットレスを評価していない。

理由は明確だ。
適切なタイミングでポケットコイルへ進化せず、旧世代コイルに固執し続けた結果、日本のベッド市場を必要以上に硬くしてしまった張本人だからである。

「畳にふとんで暮らしてきた日本人には、硬いベッドが向いている」

この言葉を、日本全国津々浦々で言い続けた罪は重い。
結果として、日本人全体に
「ベッドは硬めが正解」という根拠の薄い迷信が深く刷り込まれてしまった。

加えて致命的なのは、
「高密度連続スプリングは、なぜ寝心地が良いのか?」
という問いに対し、いまだに誰からも納得のいく説明を聞いたことがないという点だ。

要するに、
寝心地という本質を言語化できないまま、旧世代のマットレスを作り続けてきた昭和的企業なのである。

安価なモデルであれば、子供部屋用として割り切ることもできる。
だが、いい大人が大枚を叩いて選ぶ対象ではない、というのが筆者の結論だ。


そのフランスベッドが手がける、英国王室御用達ブランド

そのフランスベッドが、
英国王室御用達ブランドである スランバーランド をライセンス生産している。

トップモデルには、例によって高密度連続スプリングを搭載。
各種素材を盛り込み、豪華そうには見せているが、
中身は相変わらずのハリボテである。

ところが興味深いことに、
その下位にあたる〈ホテルラグジュアリー〉ラインには、
しれっとポケットコイルモデルが紛れ込んでいる。


SL-HL-03という「矛盾の塊」

その最上位が、SL-HL-03だ。

内部構成は、
巻き数と線径の異なる 8インチ/7インチのポケットコイルを交互に配列 するというもの。

理屈としては、
先に身体が触れる8インチが柔らかく受け止め、
続く7インチが支える、
という設計思想なのだろう。

だが、ここで疑問が生じる。

8インチ側に使われているのは、
クアドロフレックスハイブリッドスプリング――
4本の鋼線を撚り合わせた特殊線材を用いた、
ストロークが長く、しなやかに身体へ追従するコイルである。

これほど完成度の高い8インチコイルを持ちながら、
なぜ全面に配置しなかったのか。

背の高いコイルは、そのストロークの長さゆえに
体重差への許容範囲が広い。
8インチという高さは、
シモンズの カスタムロイヤル に匹敵する。

それにもかかわらず、
あえて7インチを併用する理由が見えてこない。

「なんだか凄そうに見えるから」
――もしそうだとしたら、それは設計ではなく演出だ。


馬毛だけは、素直に評価したい

一方で、
クッション層に馬毛を内蔵している点は評価に値する。

馬毛は動物性繊維ならではの
優れた吸湿・放湿性を持ち、
コシがあり耐久性も高い。

古くから欧州では高級素材として扱われてきた素材であり、
英国王室御用達を名乗るのであれば、
この装備はあって然るべきだろう。


結論:フランスベッドらしい「隠れた名機」

コイル配列には大きな疑問が残るものの、
寝心地そのものは決して悪くない。

むしろこれは、
ポケットコイルの優位性を大っぴらに認められないフランスベッドだからこそ生まれた、隠れた名機 と言える。

思想としてはちぐはぐ。
だが、結果として出来上がった寝心地は、皮肉なほどまともだ。

――それが、このSL-HL-03の正体である。

作成者: SNOWWIS

長年、日本のベッド・マットレス業界を見てきた立場から、 寝心地や構造について個人の視点で考察しています。 マットレスに「唯一の正解」はない、 体格や睡眠時間、生活環境によって最適解は変わる—— そんな前提のもと、 カタログや宣伝では語られにくい部分を中心に書いています。 特定のメーカーや商品を推奨することを目的としたブログではありません。 読んだ方が、ご自身で考え、選ぶための材料になることを目指しています。