現代の日本には、1万円を切るものから100万円を超えるものまで、無数のマットレスが溢れている。一体、その価格差はどこにあるのか。
結論から言えば、最大の違いは「設計」だ。バネが連結したボンネルコイルと、独立したポケットコイルでは製造コストが根本から違う。さらにポケットコイルの中でも、数、径、高さ、巻き数、圧縮率、熱処理の有無……スペックを挙げればキリがない。そこに鋼材の質やウレタンの密度が加わる。
だが、ここで一つ厳しい現実を言おう。
「高価格=高耐久」とは限らない。むしろ、寝心地を犠牲にしてでもガチガチに固めた安価な物の方が、皮肉にも長く使えたりする。だから評価は難しい。
あえて目安を言うなら、1万と3万には天と地ほどの差がある。3万と6万、6万と10万にも、明確な階段が存在する。しかし、10万を超えたあたりから、その「差」は徐々に縮まっていく。
15万と20万、さらにその上のゾーンになると、もはや「わかる人にしかわからない」微細な領域だ。1インチのコイル高の差をブラインドテストで聞き分けられる人が、果たしてどれほどいるだろうか。
30万円を超える世界は、スペックではなく「物語(ナラティブ)」の領域だ。そのベッドがどんな歴史を纏い、自分の人生にどんな彩りを与えてくれるか。そこへの投資になる。
そして最後に、業界の「不都合な真実」を明かそう。
多くのメーカーは、上位モデルのスプリングユニットを、そのままエントリークラスや量販店モデルに転用している。シモンズもシーリーもサータもそうだ。中身(バネ)が同じで、価格がカタログモデルの半分から3分の2という「お買い得品」は実在する。
まずはそこからブランドの世界に触れてみてほしい。「これで充分」か、「もっと先を見たい」か。自分の五感に問いかけることが、納得できる選択への唯一の道なのだ。