世の中には「万人向け」という言葉がある。
だがその多くは、誰にも強く刺さらないという意味で使われている。
ところが、ごく稀に例外がある。
サータのこのマットレスは、その例外だ。
がっしりした体格の男が寝ても腰が逃げない。
細身の女性が横を向いても肩が詰まらない。
なぜか。理由は実に単純で、ポケットコイルマットレスの寝心地を良くする方法は、実は三つしか存在しないからだ。
一つ目。
コイルの背を高くすること。
背が低いバネは、早々に底を打つ。
だが背が高ければ、重たい尻を受け止めつつ、肩や脇腹には余裕を残せる。
体重差や体型差を“許容する”という点で、ストロークの長さは正義だ。
二つ目。
コイル径を小さくすること。
粗いマットレスは、身体を面で受ける。
細かいマットレスは、点で追随する。
これはデジカメの画素数と同じで、多いほうが情報量は多い。
もっとも、無闇に増やせばいいわけではない。適正がある。
三つ目。
コイルの上をどう誤魔化すか。
バネの存在感は、ときに邪魔になる。
それを和らげるためにクッション層があり、厚みがあり、多層構造がある。
ここをケチると、どんな立派なコイルも台無しだ。
ほとんどすべてのポケットコイルマットレスは、この三方向で進化してきた。
そして当然だが、一つより二つ、二つより三つを同時に満たしたほうが、寝心地は良くなる。
さて、問題のマットレスだ。
内蔵されるコイルは7.7インチ。
6.5インチが標準だった時代を考えれば、これはなかなか思い切っている。
しかも小径コイルをシングルサイズで1080本、整然と並べている。
数だけ見れば、日本製の名作に肉薄し、アメリカ流の大雑把さとは一線を画す。
その上には高弾性フォーム。
つまり先ほどの三条件を、すべて真正面から満たしている。
さらにセンターハードのゾーニング付き。
これはもう、サータがサータであるための作法みたいなものだ。
実際に横になると、身体の凹凸がそのまま写し取られる。
隙間がない。
寝返りを打つと、抵抗がなく、妙に素直だ。
重い人も軽い人も、同じように「楽だな」と感じる。
この懐の深さは、7.7インチという絶妙なストローク長が生んでいる。
要するに、素性がいい。
余計な演出がなく、基本が正しい。
そして最後に価格を見る。
シングルサイズで税抜19万5千円。
この内容でこの値段なら、もはや理屈は要らない。
これは高級品ではなく、良識的な買い物だ。
2023年時点でのベストバイ。
そう言い切って、何の問題もない。