その1では、ポケットコイルにおいて「高さ」がいかに重要かを述べた。
では次に来る要素は何か。
答えは実に単純で、そして多くの人が見落としている。
コイルの直径である。
多くの売場では
「太いコイル=丈夫=良いマットレス」
という、いかにも分かりやすい説明がなされている。
だが、これは半分正解で、半分は完全な誤りだ。
コイルの直径を小さくし、数を増やす。
これによって、身体を“面”ではなく、より細かな“点”で支えることができる。
デジタルカメラを思い浮かべてほしい。
画素数が少ない写真は、輪郭が荒れ、細部が潰れる。
一方、画素数が多ければ、なだらかで自然な表現が可能になる。
マットレスも、まったく同じ理屈だ。
「じゃあ、細くすればするほど良いのか?」
もちろん、そんな単純な話ではない。
直径を小さくすれば、線径も細くなる。
設計を誤れば、コイルは必要以上に硬くなり、
寝た瞬間に“ガチッ”とした不快な感触を生む。
しかし――
線径の細い小径コイルを大量に配置すると話は変わる。
コイル1本あたりの主張は弱まり、
全体としては非常に滑らかで、ゴツゴツ感の少ない支持感が生まれる。
結果として、分厚いウレタンや過剰な詰め物に頼らなくても、
十分に快適な寝心地を実現できるのだ。
この思想を最も端的に体現しているのが、
日本ベッドの「シルキーポケット」シリーズである。
シングルサイズで約1200本。
これは、あのシモンズの倍以上だ。
しかも驚くべきことに、
クッション層は基本的にウレタン1層のみ。
その上にウール、もしくはポリエステルわたを載せているだけである。
それでも、横になったときのゴツゴツ感はほとんどない。
むしろ「これで足りるのか?」と思うほどシンプルだが、
寝てみると、きちんと理屈が通っていることが分かる。
同様の設計思想を持つモデルとしては、
サータの「ナチュラル/ソフトスイート7.7」がある。
こちらも派手な見た目とは無縁だが、
寝心地で評価を積み重ねてきた“玄人好み”のマットレスだ。
マットレス選びにおいて、
「分厚い=高級」
「太いコイル=安心」
と短絡的に考えてしまう人は多い。
だが、本当に見るべきなのは、
コイル1本1本が、どれだけ緻密に身体を支えているかなのである。