ダブルクッションとは、マットレスの下にボックススプリングを置くベッド構造である。
ホテルのベッドなどでよく見かける形式で、高級ベッドの象徴として語られることも多い。
しかし、この構造には少し誤解もある。
もともとダブルクッションは、マットレスの性能を補うために生まれた構造だった。
かつてのマットレスは詰め物も少なく、単体では荷重を十分に受け止められないものも多かった。
そこでマットレスの下にばね構造を置き、衝撃を分散させるという考え方が生まれた。
つまり、ダブルクッションは
性能の不足を補うための構造だったのである。
しかし状況は変わった。
ポケットコイルマットレスの一般化によって、マットレス単体の性能が大きく向上したからだ。
ポケットコイルはばねが一つ一つ独立して動くため、
・体圧分散
・振動遮断
といった性能を、マットレス単体で実現できる。
この時点で、下にスプリングを置いて性能を補う必要性は大きく下がった。
振動の観点から見ると、ここで一つの疑問が生まれる。
ポケットコイルの最大の特徴は、振動が横に伝わりにくいことだ。
ところが、その下にボンネルコイルのボックススプリングを置くとどうなるか。
ボンネルコイルは構造上、振動が横方向に広がりやすい。
つまり、ポケットコイルで抑えた振動が、下のボックススプリングを通じて広がる可能性がある。
振動を遮断する構造の下に、振動を伝える構造を置く。
これは構造として少し奇妙である。
この違和感は、価格が高くなるほど大きくなる。
例えば、100万円を超えるような高級ポケットコイルマットレスの下に、
ボンネルコイルのボックススプリングを組み合わせる構造には、正直なところ疑問を感じる。
高度な独立ばね構造の下に、横振動を伝えるばね構造を置くことになるからだ。
ダブルクッション文化の本場はアメリカである。
しかし現在、アメリカでは状況が変わりつつある。
かつて主流だったボックススプリングは減少し、
現在はコイルを持たないボトムファンデーションが一般的になりつつある。
ポケットコイルマットレスの下に
ボンネルコイルを組み合わせるようなダブルクッションは、
本国でもあまり見かけなくなった。
一方、日本では現在でもボンネルコイルのボックススプリングを組み合わせたダブルクッションが多く販売されている。
その背景には、製造体制や流通の事情もあると考えられる。
ボックススプリングは比較的シンプルな構造のため、自社工場で製造することができる。
木製ベッドフレームを外部メーカーから仕入れるよりも、供給やコストをコントロールしやすい側面もある。
こうした事情も、ダブルクッションが残っている理由の一つなのだろう。
もう一つ、ダブルクッションには実用的な理由がある。
ベッドの高さである。
ベッド上面が高くなることで立ち座りがしやすくなり、ホテルのような存在感も生まれる。
ただし、高さを確保するだけなら必ずしもスプリングは必要ない。
その役割だけなら、先述のボトムファンデーションで事足りる。
ダブルクッションは、かつては必然だった。
しかし現在では、必ずしも必要な構造ではない。
特にポケットコイルマットレスに関して言えば、
ボンネルコイルのボックススプリングを組み合わせるダブルクッションは基本的に不要だと考えている。
もし二層構造を選ぶのであれば、
上下ともポケットコイルにする方が構造としては合理的だろう。
ダブルクッションとは、絶対的な正解ではない。
歴史の中で生まれた、一つの選択肢に過ぎないのである。