シモンズ vs 日本ベッド

ポケットコイルの歴史は1900年にジェームズ・マーシャル氏がバネを袋詰めにして並べるマットレスについての特許を取得した時に始まった。
この時のポケットコイルはほとんどが手作業による組み立てであり、大量生産には向かない仕様だった。
特許期間が過ぎて他社が作り始めた後もしばらくは高級品のままだったが1925年にシモンズが大量生産に成功する。そのままの勢いで全米に確固たる地位を築き、ポケットコイル=シモンズという図式が定着した。
日本ベッドも実はその頃、ポケットコイルマットレスを製造していたが、シモンズ以外の他社と同様、手工業的な高級品に過ぎなかった。
主力はあくまでもボンネルコイル。1980年代初頭までその時代が続いていたようだ。
1981年、日本ベッドは初めて工業化したポケットコイルマットレスを発売。現在のビーズポケットの原型である。シモンズとの違いは交互配列である事と熱処理の有無。シモンズと同じ方向性ではなく独自性を持たせた判断はその後1996年の初代シルキーポケットマットレス発売に繋がっていく。
しかしながら1926年の創業から今年で100年。
なんと長い時間軸でゆっくりと動く企業なのだろう。
ボンネルコイルの時代が1926年から1981年の55年。
その後、ビーズポケットからシルキーポケットまで進化するのに15年。
そしてさらに10年経って今のシルキーポケットへと至り、その後20年コイル自体の変化は全く無い。
線径1.3mmの小径コイルを交互配列で1200個並べてシングルサイズとしたのがシルキーポケットレギュラーである。線径1.2mmはソフト、1.4mmはハード、レギュラーにピロートップを付けたタイプ、ソフトな感触のクッション層を載せ替えたパフ、シフォン、フォルテ。全て同じコイル数で高さも同一。
かつてはわかりやすさで双璧をなしていたシモンズのMDが年々複雑になっていくのとは対象的に、これ以上無いくらいシンプルなMDのまま変わっていない。
そして皇室御用達、迎賓館採用、さらに近年では星野リゾートにも採用されるなどブランドに必要な「物語」も持ち合わせている。
シモンズと決定的に異なるのはコイル高に対する考え方だろう。シモンズの場合、コイル高の階段=価格の階段であるのに対して、日本ベッドの場合、コイル高は1種類になるのでそもそも階段が存在せず、
線径とクッション層でバリエーションを作っている。
コイルの背が高くなると、ストロークが増えて重さに対する守備範囲が拡がる。重たいお尻と尖っている肩の両方に対応可能となり、体格差のあるカップルにも対応できるようになる。だが、日本ベッドはここを丸ごと切り捨てている。これは英断でもあるが、商品MD的には手詰まり感が強くなってしまう。
厚さは高級感を演出するには非常に強い要素で、視覚的に高価格の理由を伝える。
シモンズの売場はフルラインで並べた時に手前=エントリークラス、最奥=最高級というのが一目瞭然なのに対して、日本ベッドの売場はどのモデルも25cm前後に収まるので、どうしても平面的な売場になってしまう。そもそも全て並べたとしても10種類しか無いのだから、売場はコンパクトにならざるを得ない。
コンパクトな売場で完結してくれる事は販売サイドとしてはありがたい半面、売場の主役になり得ないことを意味している。売場構成全体で見た時にシモンズが奥で日本ベッドは手前に置かれやすい。つまり、ブランドの格がそこで視覚的に決まってしまうのだ。
ブランドとしてシモンズが上で日本ベッドが下などと言うつもりは毛頭無い。だが、この視覚的なメッセージは消費者にとって強烈な印象となる。
シーリーやフランスベッドのようにクッション層によってバリエーションを作る選択は採っていない。
彼らにとってクッション層はあくまでも最後の味付けであって、本質はスプリングなのである。
寝心地の面ではシルキーと銘打つだけの事はある。
たしかにきめ細かくフィットする。その点はシモンズより明らかに上だろう。シングルサイズで578個と1200個のコイル数なのだから、当然である。
弱点があるとすれば、やはりコイル高が比較的低い事になる。背が低いバネはストライクゾーンが狭い。これは如何ともし難い事実である。
だから、体格差のあるカップルが使おうとすると、2人の寝心地が共に良くなるゾーンが狭い、という事態が起こり得る。
例えば女性が小柄でシルキーパフしか合わないのに対して、男性はそれでは柔らか過ぎてお尻が下がってしまうようなケースだ。
逆に男性に合わせてシルキーシフォンにした場合、今度は女性の腰に隙間が空いてしまうなら、シルキーポケットに2人で寝る事は困難になり、シングルツインが最適解となる。
シモンズの場合、コイル高を7.5インチ、8.25インチと上げていけば2人ともが快適なモデルに到達できる可能性は高くなる。もちろん、それなりにコストは上がるし、厚く重たくなるので、現実的にローテーションは疎かになりがちになる。
その点、シルキーポケットは薄い分軽くなるのでローテーションは比較的やりやすい。
この点は明らかに日本ベッドの方に分がある。
結論として、シングルツインを選択できるならば、日本ベッドは悪くない選択。
無類の硬さを誇るシルキーハードから、小柄で腰のカーブが深い方におすすめのシルキーパフまで6モデル(ピロートップを入れれば7モデル)の中でどれかは納得のいく寝心地となる筈だ。
どのモデルを選んでも厚さの違いは僅かなので、並べて使っても違和感は少ない筈だ。

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作成者: SNOWWIS

長年、日本のベッド・マットレス業界を見てきた立場から、 寝心地や構造について個人の視点で考察しています。 マットレスに「唯一の正解」はない、 体格や睡眠時間、生活環境によって最適解は変わる—— そんな前提のもと、 カタログや宣伝では語られにくい部分を中心に書いています。 特定のメーカーや商品を推奨することを目的としたブログではありません。 読んだ方が、ご自身で考え、選ぶための材料になることを目指しています。