現在、日本において絶対的な王者のポジションに収まっているシモンズ。
しかし米国では二度の経営破綻を経て、サータ主導の統合により同一グループに組み込まれ、その後サータ・シモンズ体制の中でさらに債務整理を経験している。
こうした経緯を見ると、日本市場における位置付けとはやや異なる側面があることが分かる。
現在のアメリカ市場においては、先進性を強く打ち出すブランドというよりも、伝統的でオーセンティックなポケットコイルメーカーとして認識されている側面が強い。少なくとも、若々しさや革新性を前面に打ち出すタイプのブランドではない。
シモンズは、ポケットコイルという基本構造の完成度を高めることでブランド価値を築いてきたメーカーである。
日本市場においても、ノンスプリング構造や小径コイルなど新しい試みは行われてきたが、現在も基本構造は100年前と同じ構造の延長線上にある。
その背景には「シモンズらしさ」があるのだろう。
ブランドが長年築いてきたイメージが強いほど、新しい方向性との間に違和感が生まれることもある。完成度の高いポケットコイルこそがシモンズに期待されている役割であり、その強みが変化の幅を自然と限定している側面もある。
ではサータはどうか。
サータは1931年、全米各地のマットレスメーカーが参加するライセンスネットワークとしてスタートしたブランドである。統一された基本仕様はあるものの、各地域のメーカーがそれぞれの得意分野を活かして製品を開発するという特徴を持つ。
日本ではドリームベッドがライセンシーとして生産を担当しており、日本市場に合わせた独自仕様のモデルも展開されている。
その設計思想に影響を与えている要素の一つが、ドリームベッドが長年手掛けてきたウォーターベッドである。
現在、日本国内で家庭用ウォーターベッドを継続的に製造している大手メーカーはドリームベッドのみであり、体圧を均一に分散するという発想が製品開発の基準の一つになっていると考えられる。
その結果として生まれたのが、ジェルメモリーフォームや高弾性フォームなどを組み合わせた多層クッション構造と、複数種類のコイルを使い分けたゾーニング設計である。
前項「シモンズ vs シーリー その2」で書いた
「理屈で選ぶならシモンズ、感覚で選ぶならシーリー」
ポケットコイル単体の完成度を高めるというよりも、素材を組み合わせながら理想的な体圧分散に近づけていく方向性と言えるだろう。この点はシモンズとは異なるアプローチである。
この文脈でサータを表現するのであれば
「思想で選ぶならサータ」
となる。
やや単純化した整理ではあるが、三者の違いを理解する手掛かりにはなるはずだ。