〜シモンズの頂点、寝心地は金で買うか、魂で感じるか〜
シーリーが「100万円のベッド」なるスターンズ&フォスターで高級路線を突き進み、フランスベッドがザ・フランスベッドで追随した頃、シモンズが満を持して繰り出したのがリュクスシリーズだった……はずだ。記憶がやや霞むが、ご容赦願いたい。いま、シモンズの頂点に君臨するのはシグネチャーピロートップ。8.25インチのコイルに2.5インチのコイルを重ねたコイル・オン・コイル構造、その上にラテックスを忍ばせた分厚いクッション層を載せ、ほのかに硬めの寝心地を演出している。一つ格下には、かつての頂点だったアルティメイトピロートップ(5.5+4インチ)、さらにその下に8.25インチコイルにふかふかのピロートップを冠したプラッシュピロートップが並ぶ。これがリュクスシリーズの初代トップモデルだった……ような気がする。曖昧で恐縮だ。
どれも寝心地は上々、いや、悪かろうはずがない。シングルで81万円もするシグネチャーともなれば、「寝心地が悪い」などと口にする輩はまずおるまい。出せるわけがない。この領域に踏み込むと、理屈を超えた何か——ブランドの魔力か、財布の覚悟か——が支配する。だが、正直に言おう。ブラインドテストでカスタムロイヤルとこれらを嗅ぎ分ける自信は、筆者にはない。
真面目に語れば、硬いコイルの上に柔らかいコイルを重ねる発想は実に合理的だ。評価したい。だが、上に載るクッション層がこれほど分厚ければ、下のコイルの性能などほぼ無意味になる。シグネチャーとアルティメイトの差は、ほぼラテックスの有無で決まるといっても過言ではない。にもかかわらず、シモンズの旗艦モデルが、いまだにボンネルコイルを下に敷き、その上にポケットコイルを載せるという不思議な設計を続けるのは、なんとも解せぬ。まあ、身体から遠すぎて揺れは気にならんのだが。
シグネチャーやアルティメイトは重すぎてローテーションなど夢のまた夢。使える期間は、おそらく5年程度か。カップルで使えば、男性側の凹みが目立つだろうから、定期的に寝る位置を入れ替えるのが賢明だ。多少は寝心地の劣化を遅らせられるだろう。
忙しくてベッド選びなど面倒、シモンズの最高峰なら間違いない、寝心地さえ良ければ値段は問わぬ——そんな金満家には悪くない選択だ。だが、筆者に言わせりゃ、リュクスに100万出すなら、ウォーターベッドでも買ったほうがマシだ。