日本ベッド シルキーパフ

日本のベッドは、ようやく軟らかさを語れる段階に入った。
それは堕落でも迎合でもない。
むしろ、人間に対する理解が一段深くなった結果だ。

その変化を最も端的に示しているのが、日本ベッドのシルキーシリーズである。
日本のベッドがどこから来て、いまどこへ向かっているのか。
これほど分かりやすい標本は、他にない。

かつてシルキーポケットのベーシックグレードは、実に明快だった。
レギュラー、ハード、ソフト。
この三種で、日本人の大半は説明がついた。
ところが時代が進むにつれ、状況は変わる。

「普通」であったはずのレギュラーが、
いつしか「硬い」と言われるようになった。
そしてソフトが、事実上の「普通」を名乗り始める。
これは好みの変化ではない。
身体感覚の変化である。

この流れに真正面から応えたのが、
ソフトよりさらに軟らかい――シルキーパフだ。
これが好評を得たことで、
レギュラーを基準にしたシルキーシフォン、
ハードを基準にしたシルキーフォルテが加わり、
シルキーは現在、
〈レギュラー/ハード/ソフト〉と
〈シフォン/フォルテ/パフ〉
という二列縦隊の構成になっている。

ここまで来ると、もう後戻りはしない。
日本のベッドは、硬さを誠実さと取り違えていた時代を抜け、
まず受け止めるという思想に足を踏み入れたのだ。

それは何に近づいているのか。
言うまでもない。
神であるウォーターベッドである。

ウォーターベッドがなぜ理想なのか。
理由は単純で、
体重差も、体型差も、性別も拒まない。
点ではなく面で受け止め、
それでいて破綻しない。
守備範囲が、異様に広い。

シルキーパフも、その方向に確かに近づいている。
シルキーソフトを下敷きに、
エステル綿とノアフォームを重ね、
第一印象の
「あー、気持ちいい」
に全力で振り切った寝心地を作り上げた。

この潔さは評価すべきだ。
旧来の硬いマットレスでは仰向けになれず、
必ず横向きになってしまう女性にとって、
シルキーパフは間違いなく福音である。

ただし――
ここで目を背けてはいけない現実がある。

この軟らかさが本当に必要なのは、
かなり小柄か、腰椎前弯の強い女性にほぼ限られる。
多くの人、特に男性にとっては、
数週間後に
「……少し軟らかすぎたか」
となりやすい領域だ。

体格差の大きいカップルがシルキーパフを選べば、
男性側の寝心地はほぼ確実にスポイルされる。
ではシルキーシフォンかと言えば、
今度は女性側が硬さを感じる可能性がある。

これは好みの問題ではない。
シルキーポケットは、コイルの背が低く、守備範囲が狭い。
この構造的特性が、ここではっきり表に出ている。

解決策がないわけではない。
センターハードゾーニングをさらに進化させ、
背の低さを思想で補う――
いわば第二世代へ踏み出すという手がある。

そこまで行けば、
体格差のあるカップルにも勧められる一枚になるだろう。
もっとも、その時点でそれは、
もはや昔ながらのシルキーではないのだが。

軟らかくなったことは、是である。
ただし、神に近づくには、
軟らかさの量ではなく、許容幅が問われる。

作成者: SNOWWIS

長年、日本のベッド・マットレス業界を見てきた立場から、 寝心地や構造について個人の視点で考察しています。 マットレスに「唯一の正解」はない、 体格や睡眠時間、生活環境によって最適解は変わる—— そんな前提のもと、 カタログや宣伝では語られにくい部分を中心に書いています。 特定のメーカーや商品を推奨することを目的としたブログではありません。 読んだ方が、ご自身で考え、選ぶための材料になることを目指しています。