日本には「ダブルクッションは良いものだ」というイメージがある。
これは「ホテルが採用する物は良いものに違いない」という考え方があまりにも定着し過ぎた弊害なのだが、ハッキリ言うとダブルクッションには何ら優位性はない。現代においては。
かつてボンネルコイルが主流だった時代には多少なりとも意味はあった。それは“ロクでもない寝心地のマットレスでも2枚重ねるとマシになる”という程度のテクニックで、本ブログで取り上げるようなもともと寝心地の良いマットレスを2枚重ねたとしても、そう劇的な変化は生じない。
だから、例えば収納スペースが必要で引き出しが欲しいのにそれを我慢してダブルクッションを選ぶ必要は無いし、デザイン的に野暮ったいなあと感じるならダブルクッションを選ぶ必要は無いのだ。
特にポケットコイルマットレスの場合、ボンネルコイルのボックススプリングの上に載せてしまうと、せっかくの「寝返りの振動が伝わり難い」という長所が消されてしまい、途端にボヨンボヨンと跳ね始めるので、まったくおすすめできない。
つまり、シモンズのダブルクッションはまったくおすすめできない、という事だ。
快進撃を続けるシモンズ、そのマットレス自体はよくまとまった欠点の少ない物であるが、シモンズによる“ダブルクッション推し”、これに乗せられるのは本当にやめた方がいい。
彼らがダブルクッションに拘るのは、ただ単に自社工場で作れるからであって、ダブルクッションこそ最高の寝心地である、というわけではないのだ。
木製フレームは協力工場に作ってもらい、それを仕入れている為、どうしてもコストが下げ難い。
それに対して、ボンネルコイルのボックススプリングであれば比較的簡単に作れるし、「ホテルの寝心地です!」と謳えば、消費者は勝手に「さぞ気持ちいいのだろう…」と勘違いしてくれる。
こんなに都合のいい商品はそうそう無い。
本当に寝心地の良いマットレスなら、下からサポートしてあげなくても良い筈で、逆にダブルクッションにして初めて「寝心地良いです!」と言えるようになるようなマットレスの寝心地が本当に良いわけがない、と考えればご理解いただけるだろう。
実際、アメリカにおいてはボンネルコイルのボックススプリングによるダブルクッションはとうの昔に廃れており、現在は見た目はダブルクッション風でも、実態はクッション性の無い構造の“ボトムファンデーション”が主流となっている。
日本でアメリカ方式の“正しい”ボトムファンデーションを真面目にやっているのは(真面目にやる必要があるかどうかは別として)サータのみで、シモンズ、シーリーは利益率の高いボンネルコイルによるダブルクッション。日本ベッドはただの木箱に布を張り合わせてダブルクッション風にした、なかなか割り切った物をカタログに掲載している。
サータはこの他に、ポケットコイルのボトムをラインナップしているので、どうしてもダブルクッションに拘るのであれば、このポケットボトムを使用した“正しい”ダブルクッションを選ぶべきだろう。
くれぐれもポケットコイルonボンネルコイルのような、愚かな組み合わせを選ばぬように。