〜英国王室御用達ブランド×フランスベッド〜
既にお気づきの方もいらっしゃるだろうが、筆者はフランスベッドのマットレスを評価していない。適切なタイミングでポケットコイルに進化せず、旧世代コイルにこだわり続けた結果、日本のベッドを必要以上に硬くしたばかりか、日本全国津々浦々で「畳にふとんの日本人には硬いベッドが向いてます」と言いまくって、日本人全体に“ベッドは硬めがいい”という迷信を根付かせてしまった、なかなかに罪深いブランドだからだ。
また、「高密度連続スプリングは何故寝心地が良いのか?」の問いに未だ誰からも納得のいく答えを得られていない、という点も大きい。
要するに“たいして寝心地の良くない旧世代のマットレスを作り続けている昭和の企業”なのだ。
子供部屋に置くベッドくらいしか使い途が無い安いマットレスなら買っても良いが、いい大人が大枚叩いて買うような代物ではない。
そのフランスベッドが英国王室御用達ブランドであるスランバーランドをライセンス生産している。
トップモデルにはフランスベッド同様の高密度連続スプリングが内蔵されており、色々とこねくり回して豪華そうに見せているハリボテだが、その下の〈ホテルラグジュアリー〉ラインにしれーっとポケットコイルがラインナップされている。
そのトップがSL-HL-03で、巻き数と線径の異なる8インチ/7インチコイルが内蔵されている。
異なる特性のコイルが1列ずつ並ぶと寝心地が良くなる理屈としては、先に身体が触れる8インチが軟らかく身体を受け止め、次に控える7インチがしっかりと支える、というイメージだろうか。
だがしかし、クアドロフレックスハイブリッドスプリングなる、4本の鋼線を撚り合わせた特殊な鋼線をコイル状に成形した8インチはストロークが長くしなやかに身体にフィットするのだから、これを全面に配置するべきだったのではないか?
背の高いコイルはそのストロークの長さから、いろいろな重さに対応できる。8インチはシモンズカスタムロイヤルに匹敵する高さなのだから、7インチコイルを併用する目的がよくわからない。
なんだか凄そうに見える、という理由なのだろうか?
馬毛をクッション層に内蔵している点は評価に値する。馬毛は動物性繊維故に吸湿発散性に優れ、コシがあり耐久性もある。古くから欧州では高級品として扱われてきた素材である。英国王室御用達ブランドであるならば、こういった装備はあって然るべきだろう。
謎のコイル配列ではあるが、寝心地自体は悪くない。大っぴらにはポケットコイルの優位性を認めることが出来ないフランスベッドならではの隠れた名機である。