〜クラウンジュエルに代わるシーリーのフラッグシップ〜

クラウンジュエルを超える価格帯でシーリージャパン(スリーブセレクト)が開発した新しいシリーズ。
同じスプリングユニットの上に6モデルを展開。タイタニウムシリーズと同様だが、どうしてもこのトッピング方式になってしまうのが連結・連続コイルの弱点。
荷重によって硬さが変化するタイタニウムコイルがベースなので、ただ硬いだけのフランスベッドとは違うのだが、6タイプも必要がどうかは甚だ疑問である。
日本のベッドメーカーには展示台数が多い事を良しとする傾向があるのだが、果たして本当にそうだろうか?
販売店にしてみたら、展示として入れたはいいが、全く回転しない商品など邪魔でしかない。田舎の昔ながらの大型店であればスペースは有り余っているのかもしれないが、ひとつのシリーズに6タイプもあるとなると逆に多過ぎて選び難くなってしまう事さえあるだろう。
逆にスペースが無く、6タイプ全て並べられない場合は、その欠けているピースが気になってしまい、それを試すべくメーカーショールームにわざわざ脚を運ぶ事になる。
必要なのはストーリーなのだ。
上→下→中の松竹梅方式でもいいし、下→中→上のフットインザドア方式でも、
上→中→下のフェイスインザドア方式でも、
いずれにしてもせいぜい選択肢は3つ程度が選びやすい筈だ。
純粋に寝心地を考えての6タイプなのであれば何ら問題は無いが、どうもこのラインナップからは「作れるんだからとりあえず並べとけ」程度のイメージしか湧いてこない。
コイルonコイルによって高価格に説得力を持たせる、というのはシモンズリュクスと同様。世の中にはお金の使い途に困っている方が居て、こういった商品の存在価値はそこにこそ有るのだが、その意味ではこれまで最高級だったクラウンジュエルのレストサポートコイルベースではないのが残念な点である。
肝心の寝心地は、シーリーらしい軟らかさで、雲の上に乗っているかのような軽さの奥に、しっかりとしたバネが控えている独特なもので、悪くはない。筆者のようなコイル至上主義者はクッション層がいちばん薄いTTに興味を持つが、一般的には最も高額なプレミアムEPTがファーストチョイスになるだろう。
前述の通り、ブランドの最高級ラインを選択する人にとっては、最高である事こそが大事なのだから、実際の寝心地など二の次で、その値段なりの雰囲気と寝心地であればそれで良いのだ。
したがって、プレミアムEPTが最も売れ筋となる。
問題は、このプレミアムEPTと同じ厚さ(39cm)で違う寝心地のモデルが存在しない事。せっかく6型もあるのに何故か39,40,40,37,35,33cmと2番目と3番目が同じ厚さで並んでいる。
プレミアムEPTが誰にでも好まれるような汎用性の高い寝心地なら良いのだが、シーリーらしさを体現するいかにもシーリーらしい軟らかな寝心地なのでどうしてもその寝心地から外れてしまう人が少なくない。
日本のカップルの場合、住宅事情や文化の関係でシングルサイズ2台を並べるシングルツインを選択するケースが多い。こんな事は業界の誰でもが知っているのだから、シーリーらしさにこだわるなら同じ厚さで違う寝心地を用意するべきだろう。